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「玉川桃太郎・祐子に太福がじっくり学ぶ会」於:木馬亭 5/16

現役最高齢の浪曲師、玉川桃太郎師匠が御歳91歳。

その相三味線をつとめる、妻の祐子師匠が御歳92歳。二人合わせて、

 

183歳。

 

浪曲師としてだけでなく、コンビの芸として、これは現在、日本で最高齢ではないかと思います。

 

浪曲協会のHPに掲載されているプロフィールは、ごくごくごく、シンプルでして、うちにあった資料の中から、詳しく載っているものを、抜粋いたしました。

ちょっと長いですが、ぜひ読んでみてください。

 

生き方が、まさしく「浪花節」の物語。

 

玉川桃太郎•プロフィール

本名•中村勝司      ○生年月日:大正12年12月27日    ○出身:栃木県宇都宮

来歴:(芝清之•著「日本浪曲大全集」より抜粋。平成元年発行)

両親、兄弟ともに顔を知らず、同じ宇都宮に居住していた中村家に養子として縁づいて育てられた。

勝司は、小学校を卒業してから、青果店に勤めていた養父とともに働き、その頃から街で耳にする浪曲のメロディに魅せられ、小遣いを貯めて買ってきたレコードを聴きながら、節をやってみたら面白いように出来たので、それが病みつきとなって、彼の棚の上には浪曲のレコードが山のようになった。声にかけては小学生の頃から成績は上であったし、休みの日には店の仲間を集めて一席演じて人気者となった。

さあ、そうなるとレコードでは我慢できず、宇都宮の劇場に浪曲が掛かると、どんなに忙しくともやりくりをつけて聴きに行った。次はいつ来るかと待ち遠しいほどになった。終演後店に戻ると、皆の寝静まるのを待って、裏の空き地に出て今晩聴いてきた演題を練習したという。

遂には商売の青物を売るときにも、浪曲入りの口上をつけるのでお客が大喜び、品物は飛ぶように売れて店主もニコニコ。“浪曲八百屋の勝ちゃん”の名は街中の評判になった。

宇都宮で、飲食店を内儀さんに営業させていた初代勝太郎の弟子•玉川如月が、この噂を聞き込んで勝司に会いにきた。少年の声と節廻しにすっかり惚れ込んで、プロになることをすすめた。勝司も、出来ることなら浪曲家になりたいと思っていた矢先だったので、養父に相談したら、“それほど、お前がやりたいなら、しっかりやんな”と、快く承諾してくれた。

それからしばらく後に、宇都宮の宮益座に二代•玉川勝太郎が来演したので、如月が彼を引き会わせた。改めて、昭和15年4月、店から暇をもらって上京し、浅草田島町の勝太郎宅を訪れて正式に弟子入りした。勝司17歳の春である。

芸名を、“玉川桃太郎”と命名され、その年の秋に上野御徒町の銀線座で初舞台を踏み、「祝町の仇討ち」を読んだ。4年の修業を終わって昭和19年に兵隊にとられ、昭和21年まで北支にいた。帰国してから勉強のやり直しと、兄弟子•子次郎、太郎、勝正らに負けぬように頑張った。

その甲斐あって、昭和45年11月18日から3日間、浅草国際劇場の大会に日本浪曲協会推薦によって初出場。新作「隅田川親子千鳥」を熱演して、“桃太郎ここにあり”と浪界に地盤を確立した。

玉川の門弟は、桃太郎だけに限らず、他の者もそうだが師匠の読み物はなるべくさけて、自分たち独自の“台本”と“節調”をもっている。現、(一社)日本浪曲協会理事。平成16年、下町人間庶民文化賞受賞。

 

主な演題:「忠治山形屋」「天保水滸伝」「小金井小次郎」「越の海勇蔵」「銚子の五郎蔵」「隅田川親子千鳥」

「男はつらいよ(台本•大西信行)」「四千両」

(レコード初):昭和53年「越の海勇蔵」ローオンレコード

(ラジオ初):昭和32年「葛飾北斎」NHK

(テレビ初):昭和48年「小金井小次郎」千葉テレビ 趣味:釣り、相撲、パチンコ

趣味:釣り、相撲、パチンコ

 

玉川祐子•プロフィール

本名•中村りよ ○生年月日:大正11年10月1日 ○出身:茨城県笠間

来歴:(芝清之•編集「東西浪曲大名鑑」より抜粋。昭和57年発行)

父は農業に従事し、男1人、女5人の次女である。小学校を出て13歳で笠間の呉服屋に奉公し、子守りをしながら聴いた浪花節のレコードに魅せられて、浪曲のトリコになった。浪花亭綾太郎、天中軒女雲月が近くの小屋に掛かったが、奉公の身で入場できず、楽屋口から漏れてくる節を聴いて慰めた。将来は女流浪曲家になりたいと、3年の奉公を終えると昭和15年、18歳のときに上京して江東区に住む従兄を頼った。

広沢虎造の弟子にしてもらおうと、浪花家興行社を訪れて、虎造に入門したいと申し込んだが、虎造には弟子が多すぎるからと、鈴木照子を紹介され、その年に入門した。

昭和16年1月、三ノ輪の三遊亭に“鈴木照千代”の芸名で初舞台を勤め、三日間に「花売り娘」「乃木将軍辻占売り」「間十次郎」の三席を読んだ。

一生懸命に修業に励んだが、思うように声と節調が廻らず、すっかり自身を失って、翌17年5月、曲師に転向を決意。寄席の名人•春日清鶴の内儀さんの手ほどきを受け、曲師の道を歩きはじめた。

あとは独習で勉強して今日に至っている。

前夫とは離別し、昭和50年に玉川桃太郎と再婚、今日まで相三味線をつとめている。

 

趣味:編み物(プロ級)←太福が加筆。

 

「大看板」二代目勝太郎先生のもとで、師匠のモノマネではなく、ご自分の節回しを追求し、完成させた桃太郎師匠。

この頃では、舞台以外のところでは、かなり言葉少なくなられましたが、私が毎月くらいお稽古に通っていた数年前には、かならず言われた言葉があります。

「自分の節をつくらなきゃいけないよ」

「自慢じゃないが、いまの浪曲師のなかで、自分の節をもってるのは、何人もいないよ」

身びいきではなく、また、代々の節回しをきっちり受け継ぐという家系もありますから、一概にそれが良いとか悪いとかはさておき、わたしもその通りじゃないかと思います。

具体的に、手取り足取り教えてくださるということはまったくなく、というのも、師匠がそのような経験をされていないからだと。

五月一朗先生、東家三楽先生、全盛期に浪曲家になられた先生方が口をそろえていうのは、

「芸は盗むもんだ」

桃太郎師匠からも、何十回聞かされた言葉かわかりません。

他にも、たぶん、日本中で、こんな口癖をいう人、絶対いないだろうって、格好良すぎるフレーズもあります。それは当日のお楽しみで。格好良すぎます。わたしも、そのうち真似ます(笑)

とはいえ、基本的に昔から無口といいますか、「静かなダンディズム」の塊である桃太郎師匠と対照的な、祐子師匠の明るさと元気さたるや。いまでも、ちょっと目を離すと、スキップして歩きだしちゃうので「師匠!危ないので、スキップやめてください!」と止めるのが大変で。。。

 

弟子入りされた頃の苦労話は、最近になって「え、それ初めてうかがいます!」というくらいで、また、たくさんあるだけでなく、そこに出てくるの浪曲師の名前が、広沢虎造、春日清鶴、港家華柳丸、、、名だたる名人たちばかりという。

 

書物や音源でしられる先生方のエピソードはたくさんありますが、体験談としてお話できるのは、いまや祐子師匠くらいしかいないのではないかと思います。

 

当日は、桃太郎師匠の十八番のひとつ「越の海勇蔵」を、祐子師匠の三味線で、太福がつとめさせていただきます。

 

明るい浪花節、楽しい浪花節、悲しみ溢れる浪花節、いろんな浪曲の特色がありますが、わたし思いますに、侠客伝を得意とした玉川一門の特色といえば、やはり「男らしさ」「ダンディズム」ではないかと。

 

桃太郎師匠の浪曲は、声節にも、啖呵にも、まさに、その「男らしさ」が溢れ出ております。

 

以前、師匠の鞄持ちで、師匠を楽屋口から車までお送りする際に、肩がぶつかったか、道に割り込まれたのか、とにかく、師匠自身にではなく、わたしが一緒に歩いていた師匠の友人が、通行人に無礼な振る舞いをされたときに、

「なんだ、あの野郎」

と、今にも一喝して、掴みかからんばかりのオーラを放たれたことがありまして、でも、その師匠の足元はおぼつかず、私が手を引いていたりするという。。。

 

根っからの、「ダンディズム」溢れる師匠なんです。

 

引退公演でもなんでもありません。これからも、お声のでる限り、木馬亭へご出演される桃太郎師匠、祐子師匠ではございますが、師匠の一席も、祐子師匠がメイン(になると思います(笑))の鼎談も、

「かつての浪花節の黄金期」

を、まったく知らない私やお客様にとって、体験として感じることのできる貴重な機会になることと思います。

 

ぜひぜひ、ご来場くださいませ。

 

16日(土)

「玉川桃太郎・祐子に玉川太福がじっくり学ぶ会」 14時開演 13時30分開場

出演:玉川桃太郎、玉川太福 開口一番:港家小ゆき 前説:港家小そめ

曲師:玉川祐子、玉川みね子

会場:浅草木馬亭

木戸銭:3000円

ご予約・お問い合わせ:tamafukukai@gmail.com TEL:090-6159-3284(玉福会)

 

開口一番があり、前説もあんのかい(笑)

じつは、この会のチラシを手にした瞬間「お手伝いさせてください!」と申し出てくれた、港家小そめさんに、開演前の前説もふくめて、15分くらい口演していただくことになりました。13時45分〜の予定でございます。今年デビューしたばかりのフレッシュな姿をぜひ。

 

桃太郎師匠チラシ入稿OL

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